人がウソをつく心理的理由とは
ウソはいけません!とは言いますが、大人ならウソのひとつやふたつ、ついたことくらいあるでしょう。
小さなウソ、笑えるウソならともかく、大きなウソがバレたら相手にショックを与えますし、自分自身の信頼まで落としてしまうかもしれません。
家庭教師の仕事をしていると、子どものウソにはしょっちゅう出くわします。
やっていない宿題を「やりました」と言われるのは序の口。わからないのに「わかりました」と言う子どもも多いです。今まで一番ひどかったものでは、テストでの不正行為がありました。
ウソを付くリスクのにはリスクだってあります。なのに、人はどうしてそこまでしてウソをつこうとするのでしょうか。
そこで、人はなぜウソをついてしまうのか?徹底的に調べてみました。
ウソの12類型
山梨医科大学紀要に掲載された『対人関係におけるdeception(嘘)』というレポートに、ウソの12類型が書かれています。
- 予防線
偽って、起こりうるトラブルを回避しようとするウソ。遊びに行くのに「塾に行ってくるよ」というようなウソです。 - その場逃れ
したことに対して「してないよ」と言ったり、していないのに「したよ」という、事実を偽るウソ。宿題をしていないのに、「宿題はもうやった」というウソですね。 - 合理化
約束を守れなかったときの口実のようなウソ。一日1時間勉強すると約束したのにできなかったとき、「今日は忙しかったから!」というようなウソ。 - 見栄
自分をよく見せるためのウソ。テストで70点位なのに、「俺、今回90点だったんだよね」みたいなやつです。 - 利害
金銭が絡んでいる件で、自分がトクをするためのウソ。 - 思いやり
相手のためにつくウソ。もう彼氏のことを好きじゃないのに「仕事が忙しいから別れよう」とか言うやつです。 - 引っかけ
ドッキリ等で相手を騙すためのウソ。 - 罪隠し
悪事を隠すためのウソ。 - 甘え
自分を許してほしい、庇護してほしい意図を含んだウソ。 - 能力・経歴
自分の能力を高くあるいは低く言う。学歴詐称など。 - 約束破り
約束が守れなかったときのウソ。「今日中にノートを返す」と言ったのに、その日のうちに返せないなど。意図的ではないものも含む。 - 勘違い
知識不足、勘違いで結果的に嘘になってしまう場合。提出期限が明日なのを知らずに「明後日までだよ」とクラスメイトに吹聴したり。
本調査では、大学生と社会人について調査していますが、この中で特に多いのは、「1. 予防線」「2.その場逃れ」「3.合理化」でした。
つまり、人は保身のためにウソをつくことが多い、ということですね。
保身のためにウソをつく子ども
もう数年前のことなので時効ということで書きますが、私の生徒で、定期試験で不正をした子がいました。
テストの点数が思ったより悪かったため、テストの得点を書き直していたのです。そんなことをしたってすぐばれるというのに。
生徒さん本人に聞いたところ、怒られるのがどうしても怖かったとのこと。
別の生徒さんからは、「クラスメイトがよく試験でカンニングをしている」という話を聞いたりします。親がとても厳しいから、100点以外許してもらえないから仕方がない、ということらしいです。
子どもにとっては、家庭と学校が世界の全てです。その二つしかコミュニティを持っていない子どもが大半でしょう。
社会的に未成熟な子どもにとって、学校から見放されたら仲間を失うことになる。家庭から捨てられたら、居場所を失うことになる。彼らにとってはすなわち死を意味します。
しつけが厳しい家の子が嘘をつくのは、だいたい「怒られるのが怖い」から。特に厳しいご家庭だと、子どもは保身の必要性が増すので、ウソをつかないといけないこともあるのでしょう。
裏にある感情は?
ウソを許すことはいけません。
ですが、うそを付くときというのは、何かしらの理由があります。
本人が自覚していることもあれば、していないこともありますが。子どもの場合は、自覚していたとしても、語彙力がないためうまく言語化できず、表現できないことも多いです。
以前、宿題をやっていないのに「やった」とうそをついて遊びに行ってしまう子どもがいました。
彼女に「怒らないから」と約束したうえで話を聞いてみたところ、「その時間に行かないと仲間外れにされちゃう」と泣きながら話していたんです。
うらにあったのは、「仲間外れにされたくない感情」でした。
そんな子とは付き合うな!と言ってしまうことは簡単なのですが、「そんな子」との付き合いを禁じたところで、子どもを宿題をやるようにはなりません。
問題は、付き合いと宿題との両立をどう考えるか。例えば、夕食後など遅い時間に宿題をするとか、朝早く起きて宿題をするとか、その子の気持ちを汲んだうえでの対策がベストです。
勉強に関係あるかないかに関わらず、子どもがうそをついていたら、頭ごなしに叱るのではなく、じっくりと話を聞いてみて下さい。
親や先生だと、保身のために子どもがさらにウソを重ねてみたり、本音を言わないこともあるので、第三者を通すのもありです。
その後ろにどんな感情があるのか。裏の感情を見て根本解決しない限りは、子どもは同じウソをつき続けることもあります。
解決策がわからない
どんどん口がうまくなって、日に日に子どもたちは大人っぽくなっていきます。
とはいえ、彼らはまだまだ子どもなので、「問題解決の方法」を知りません。
テストで点が悪かったら、正直に言えばいいと大人は考えるのですが、彼らがそれをできないのは「怒られて家を追い出されたらどうしよう」みたいな感じにしか考えられないためです。
「正直に言った方が後々のためにもいい」のですが、そのこと自体を知らなかったりするのです。だから、困ったときに、自分の身を守りたいときに、どう立ち回るべきかを教えてあげましょう。
私は、生徒さんが宿題を忘れたときはこう言います。
「言い訳の前にまずきちんと「ごめんなさい」。そのあと、そうなった原因と、同じことを二度しないためにすることを言いましょう。
この3つをちゃんと言えたら怒らないから。人間なら誰にでもミスはあるからね。ただ、同じ間違いを二回やるのは学んでないし、成長していない証拠だから、その時は怒るからね。」
これを口を酸っぱく伝えて、問題が起きたらすぐに教えてほしいと言い続けていたら、生徒さんたちのうそはほとんどなくなり、みんな素直に話してくれるようになりました。
これを真似する必要はないのですが、ご家庭で「何か問題があったらこうしましょう」みたいな行動指針があってもいいかもしれません。
まとめ
家庭教師をしていると、勉強絡みだけでなく、学校のこと、家庭のことで、様々なウソを聞かされます。
そのたびに悲しい気持ちになるのですが‥そのたびにこう考えます。「相手にもウソをつかないといけない理由があったはず」と。
そうすると相手のことをより理解できるようになります。
すごく大変なことですが、同じウソを繰り返さないためにも、じっくりと相手と話し合うことが必要かと思います。特に子どもは純粋ですし、平気でウソをつけるほどの悪知恵もずる賢さも黒さも持ち合わせていないと私は信じています。
ウソの12類型を参考に、相手がなぜウソをついているのか、話を聞いて、よく見極めてみてくださいね。
◆参考URL
山梨大学学術リポジトリ 対人関係におけるdeception(嘘)
◆参考文献
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