私が学生時代に講師をしていた塾のリーダーは、よくこんなことを言っていました。
「生徒のことを信用してはいけない。子どもはすぐに嘘をつく。だから厳しく接して勉強させないといけない。」
つまり、やらないことを前提にしなさいと。どうすればやるのかを考えたら、ある程度の厳しさで強制する必要があると。
この考え方、分からなくもないのですが、、、あなたはどう思いますか?
性悪説に基づいた管理
「宿題を忘れてきてしまった生徒がいたら厳しく叱り、罰を与えるべき。なぜなら、彼らを信じて許してしまっても、約束は守らないから。」
「放っておいたとしても、どうせ自ら勉強することはない。だから補習塾が必要な成績にまで落ち込んだんだ。彼らを信じてはいけない」と言われ続けました。
今、一人で仕事をしていて思うのです。「生徒を信用しない」は正しいのでしょうか。
疑いの目で見て、「できなかった場合は○○」と、できないことを前提に考えていたら
子どもは伸びるのでしょうか。
そんな大人に、子どもはついてくるのでしょうか?
残念なことに、不信の目で見ていたら、相手に伝わってしまいます。
「この人、自分のことを信頼していないな」と。子どもはその点の非言語についてはとても敏感です。
不信感が相手に伝わると、確実に相手はこちらを信じません。だから余計に信じられなくなり、恐れや強制を用いて管理しようとする。
完全に悪循環です。
【信用できない】 子供はどうせ約束を守らない。不信感を募らせながら日々仕事をするのは、私にとってはあまりにも苦しいことです。
こんな大人にはなりたくないな
もちろん、できないことを前提に備えることは必要だと思うのですが、この考え方をベースにして仕事をするのはすごく嫌だな~と私は思うのです。
お腹の奥が苦しくなるような、黒い感情に覆われる感じがしました。
たしかに人を信じるのは怖いことです。裏切られたらどうしようと心配になります。
でも、私は生徒さんを信頼することに決めました。
「今のあなたの実力ならできるよ。」
「絶対大丈夫。だから、挑戦してほしい」
不安はありますが、
そういう心持でいるほうが
生徒さんたちもしっかりやってくれるように思います。
信じられないのは、弱いから
相手を信じられないのは、相手が裏切る人だから…ではありません!
裏切られることを過度に恐れすぎた結果だと私は思うのです。「どうせ裏切るから信じない」は、自分自身の弱さにほかなりません。裏切られたらどうしようと過度に心配して恐れるから、裏切られたくないのでしょう。
ベクトルが完全に自分を向いていますよね。自分の恐れを相手に向けているだけ。
これでは、結局のところ生徒のためではなく、自分のために指導をしているだけなんです。
さらに、これを相手のせいにするのは…大人の姿勢としてどうなのだろうと。
人間誰しも弱さを持っています。それは仕方のないことです。仕方のないことだと認めつつ、克服して更に強くなって、人間として成長する姿をみせるのが、人を育てる人、大人の役割ではないかなと思ったりもします。
大量の宿題を出した冬休み
ある年の年末年始のお休みに、生徒さん達にはたくさん宿題を出しました。
苦手を克服してほしい。
スケジュールの立て方を学んでほしい。
様々な目的を持って。
仕事始めの時、生徒さんたちがきちんとやってきてくれるか、すごく不安でした。できていなかったらどうしよう?何を言おうか?とばかり考えていたので、冬休みの間、苦しかったです。
今週1週間、訪問してどうだったかというと…
生徒さん皆さん、自分なりに努力してしっかり宿題をしてきてくれていました。
同時に、疑ってしまった自分を恥じました。みんな、ごめん!!!!
一瞬でも「無理かも」とか「やっていない前提で授業シミュレーションしとくか」とか考えた私を許してください…(泣)
いいことを報告したい生徒たち
生徒さんの家に行くと、まず最初に「先生、聞いてくださいよ」から始まります。
何の話かというと、ひとつはその週にあったいいこと。先生からほめられたんですよ、難しい問題が解けるようになりましたよ。当てられて上手に応えられるようになりましたよ。学校行事で入賞しましたよ。
そしてもう一つは、その週に頑張ったこと。今週はこんなに勉強したんですよ、いつもは授業中寝ちゃうけれど、今週は頑張って起きてみました、早起きをはじめました、スマホ断ちしてみました等々。
その報告を聞くのがすごくうれしいんです。
きっと生徒さんたちも、その報告を楽しんでいる。できることなら、よかったことについて話していたいんだろうな、と思うんです。ほめられるためにやるわけではないけれど、ほめられたら当然嬉しい。
その気持ちを理解して、生徒さんたちと接していたいのです。
怖いけど、信じています
私もまだまだ未熟です。生徒さんから学ぶこともとても多いです。
不信感をもって人を管理したりしたくありません。理想主義かもしれませんが、お互いに信頼しあっていたいです。
それでも、生徒さんを信じて任せることは曲げずにやっていくと決めました。これからも、生徒さんたちを信じて見守っていきます。