「うちの子、バカなんです」
「本当、だめな子で…」
親御さんと話していると、時々子どもディスりを聞かされます。
おそらく、謙遜でしょう。国語で、「身内の動作には謙譲語を使いましょう」と日本人誰もが習ったはずです。身内に対してはへりくだるのが日本の素敵な文化なのかもしれません。贈り物に「つまらないものですが」というくらいの軽い気持ちでしょう。
そんな日本文化はよく理解しています。
ですが。
自分の身内、特に子どもを「バカ」「ダメ」呼ばわりする人、私は大キライです。別に家の中では好きに呼んだらいいと思いますが、子どもの目の前で、私の前でそういう言い方だけは無理です。理由は単純。気分が悪いから。普段は温厚な私ですがこればっかりはあまりにも腹がたつのでその理由も分析してみました。
実録!娘の名前を…「バカ」で電話帳登録
先日、あるお母様と話していて驚きました。
娘さんのことを「バカ○○(娘さんの名前)」と呼んでいて、人前でも「うちのバカ娘が」と平気で言うのです。なんと、携帯電話の電話帳にも「バカ○○(娘さんの名前)」と登録していることが判明。
理解に苦しみます。
さらに驚いたことに、この方、「うちの子はバカだから厳しくしてね」と言いながら、宿題をやっていないとか約束を守れなかったからと子どもに苦言を呈したところ「やめてください」「厳しいことを言わないで」と懇願してきました。
自己卑下と同一視の心理
かなり極端な例ではありますが、自分の子どもをダメダメと言いながら極度に守ろうとする方は少なくありません。
こういう方々って、「うちの子はバカで」に対して肯定の言葉をかけようものなら(絶対にしませんが)、烈火の如く怒りだします。
おそらく、こういう方は自己卑下の気持ちが強いのでしょう。自分はダメだという気持ちです。自分を認められないのかもしれないと。おそらく、「私ってダメ」と普段考えていて、発言にも自己卑下が出ているかもしれません。
さらに、自身と身内を同一視する傾向があります。自分と身内との境界が曖昧で、身内と自分と同じものと考えてしまう。だから、子どもが注意されると自分が責められているという気持ちに陥り、抵抗を示したり、落ち込んでしまうのだと私は思います。
数式に置き換えると、
自分=身内
自分=ダメ
よって、身内=ダメ
という等式が成り立っているのだろうと私は分析しています。
実際に言われた人の気持ち
もし私なら、落ち込みます。というか、言われたことがありますので分かります。
物凄くショックでした。それなりに勉強もやっていたし、成績も恥ずかしくないくらいのレベルで、優等生でいたつもりだったので、余計です。
大人になった今は、その心情も理解できるのです。ただの謙遜あるいはジョークだったと。でも、子どもの私にはそんな大人の事情なんて、よくわかりませんでした。
思い出すだけで悲しくなります。
家族でなくても、関係の近い人に「この子は全然だめで~」みたいなことを人前で言われたこともあります。凹んだのでおつきあいを辞めました。冗談とか、建前とか、謙遜とか。大人だからわかりますけれど、決して気分のいいものではありません。
すみません、脱線してしまいました。
何のために家庭教師を付けているの
お子さんの話に戻ります。
そんなんで、お子さんの成績は伸びるんですかね?
一生懸命勉強しようと思うんですかね?
「自分はできる」と信じられるようになるんですかね?
一番近くで子どもを見ている親御さんがそんな調子で。成績を伸ばしたいのに、子どもをバカダメ呼ばわり。「愚息」のようなニュアンスでへりくだって、そう言っているのかもしれません。お気持ちは、わかります。
ですが、考えてみてください。「うちの子はバカでダメで」と言われた娘さんはどう思っているのでしょうか。
教える側はプロですが、それ以前に「人間」です。人を罵倒する言葉は、気持ちを暗くし、重くし、マイナス感情を与えます。
その子の成績を上げるために必死で努力している塾の先生や常にその子のことを考えている家庭教師はどう思うか、わかるでしょうか?
へりくだる気持ちや謙遜するためだとしても、うまくいかなくてイライラしていたとしても、子どもを下げるようなことだけは言わないでください。少なくとも、私の前では。
いいところを伸ばしてあげたい
私の生徒さんたちって、極度に勉強がキライな子もいれば、学校に行けていない子もいれば、発達障害で勉強に苦労する子もいます。
確かに成績は、親御さんの満足いくレベルではないかもしれません。
ですが、みんな必ず、例外なく、素晴らしいところがあります。素晴らしい特技を持っていたり、一つの分野で大人顔負けの知識を持っていたり、性格が素直ですごく明るかったり。
私のポリシーは「あなたはできる」
たとえ今現在、成績が悪いとしても、必ず伸びると信じるからこそ、勉強を教え続けるのです。楽ではないこともあります。一筋縄ではいかない子もいます。その際には常に「成績を上げるにはもっといい方法はないだろうか」と考えます。
その横で、うちの子はダメで~。なんて言われたら、どうですか。
お願いだから悪口はやめてください
子どもを自慢しろとか、溺愛しろとは言いません。ただ、私の前ではお子さんの悪口は言わないで下さい。聞きたくありません。
できれば、「子どもがこんなことができるようになった」「こんないいことがあった」とか、そういう話で盛り上がりたいです。
勉強ができない、成績が上がらない子どもたちに自信をつけてあげたいのです。